テラは今まで宇宙にて数多くの開発が進められてきた地であり、また数多くの戦闘も行われてきた。
 その名残であったり、テラ地表までたどり着けなかった隕石であったり。
 成因は様々であるが、そこには多くのスペースデブリ、ゴミが存在する。
 その中に一際大きい、軌道上にあることが不自然であるほどの巨大な岩石が周回軌道上に存在していた。

 否、『存在し始めた』のだった。

 あまりにも巨大で、すぐにも周回軌道から降下軌道に落ちそうなそれは決してテラへ近づくことなく、
 また離れることもなく同じ距離を移動し続ける。
 デブリの止まることのないその動きが止まるのは、地表に落ちたときだけである。
 だが、これは違った。
 ゆっくりを速度を『落とし』始めた。
 テラへ降下したのでは速度が上がる。
 これは自分で速度を『落とした』のだ。

 そして、その表面がボロボロと崩れ始めた。大気に触れてもいないのに、その岩石がポロリポロリと、小さなつぶてになってあたりを漂い始める。
 大きな岩が剥がれ、そこから更に小さな岩が剥がれ、
 そして、そこから無数の繊維が噴出した。

 その岩石中に、明らかに岩ではない『何か』が姿を見せはじめる。

 自然のものではない、光沢を持った青い直線。
 デブリの中から現れたそれの表面に傷はなく、その表面を覆っていた岩石も自然にと言うにはあまりにも早すぎる速度で剥がれ落ちた。
 そこにいたのは、幾何的な物体であった。

 青色の正八面体が五つ、一際大きな一つの4隅にくっついた形の不思議な物体。しかしてその巨体は物言わぬままでも十分な威圧感を放っていた。
 何者をも近づけぬと、そういう意地をもっていた。
 それは同時に、製作者たちの意地でもあった。

 完全に岩石が剥がれ、その姿をあらわにした青い物体。
 その身を白く覆う繭の中に守られながら、母星を守るためその身一つで広大な宇宙空間に喧嘩を売る不恰好な守り手。
 それこそが正義の砦、フォート・オブ・ジャスティス。

 この砦がある限り、どんな脅威もテラへは近づけはしない。






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